激しくなった情報戦争 ― 日本を守る法整備を ―

宮﨑貞行議員立法研究センター代表

「フェイクニュース」――。トランプ大統領が登場してから急に有名になったこの言葉。「ウソの報道」、「ニセ情報」という意味ですが、世界で新語を募集するなら、まちがいなく「フェイクニュース」が新語大賞を受けることでしょう。

トランプ大統領は、何に対して怒っているのでしょうか。いうまでもなく、トランプの足を引っ張ろうとする国内のリベラルな報道組織に怒っているのです。ニューヨークタイムズ、ワシントンポスト、CNNなどは、大きな政府による社会保障の充実や移民の受け入れを主張していますが、トランプは真逆の政策を唱えています。

もう一つ、既存の報道組織の裏に、東部エスタブリッシュメント(特権階級)がいることも忘れてはなりません。彼らから見れば、トランプは野卑な成りあがりの田舎者でしかありません。

巨額の金融取引を牛耳り、エネルギー産業を支配してきた東部の大資本は、アメリカの労働者の利益よりも、自分たちの利益を追求します。彼らは、儲かるなら労働者の利益は二の次にして、世界の独裁国とも取引し、安値で大量購入します。二年前の大統領選挙では、それによって貧しくなった白人の労働者たちが、反旗を翻し、トランプに票を投じたのでした。「フェイクニュース」に対し、トランプは負けていません。

既存の新聞・テレビはトランプの意見を載せないので、彼はツイッター(一言つぶやき)で毎日反撃しています。今では、トランプのツイッターの登録者は、世界で五千三百万人に上っています。ニューヨークタイムズの購読者が、デジタル版も含めて三百八十万人なのに比べて、けた違いです。

けれども、ツイッターの記事が真実かというと、必ずしもそうとは言えません。私も、ツイッターやフェイスブックを見ていますが、悪意ある中傷、デマ、一方的な宣伝などが氾濫しています。今はやりの、そうしたSNS(ネットメディア)も「フェイクニュース」で満ち溢れているのです

フェイクの五つの種類

状況は我が国でも同じです。安倍内閣の政策に不満な左翼系の新聞は、しきりに揚げ足取りの批判や公平でない偏向報道を続けています。建設的な提言をしないで、うらみつらみの感情が透けて見えるエッセイのような記事を流しては得々としています。左翼系の新聞、テレビは、自分たちの権力を強めたいとする権力志向が強く、客観的な報道組織というよりは独善的な権力組織のように見えます。

このような我が国の「フェイクニュース」に対して、国民はどのように対応すればよいのでしょうか。それには、まず「フェイク」(ウソ、ニセ)の性質をよく分析することから始めなければならないでしょう。

ウソの記事は、ウソと見破られないように、もっともらしい出来事から始めるのが普通です。その型として、⑴針小棒大型、⑵感情刺激型、⑶一面誇張型、⑷不公平取り扱い型、⑸お先棒かつぎ型などの五つの型があります。

⑴典型的な針小棒大型のニュースは、モリ・カケ問題でした。国有地の払い下げにからんだ森友学園、大学設置の認可にからんだ加計学園のニュースは、ひところ話題を独占しましたが、いまではすっかり忘れられています。

これは、財務省や文科省の小さな手続きミスを安倍内閣の一大責任に結び付け、倒閣を図ろうとした政治謀略であったのではないでしょうか。そうでなくても、連日一面を大きく割いて取り上げるにふさわしい記事ではありませんでした。逆に、このニュースによって、北朝鮮の核問題や中国の南シナ海占領は、すっかり影が薄くされてしまいました。

⑵感情刺激型のフェイクは、防衛や核武装を取り上げる記事によく登場します。「戦争は嫌だ」「平和が大事」「被爆国だから核武装はやめよ」という趣旨の記事は、感情に訴えようとしますから、女性たちには人気を博します。しかし、それだけでは、中共の軍備増強を止めることもできないことは明らかですし、中東などで戦乱が絶えない理由を説明することもできません。

武力戦争のほかに武力を用いない情報戦争、サイバー戦争、金融戦争が日々続けられています。いくら「平和」を唱えても戦争がなくならないという非情な事実から目をそらそうとしている記事が、今も目につきます。「平和」にも、チベットやウィグルのように他国に隷属し文化を奪われる「奴隷の平和」というのがあります。「奴隷の平和」でよいのか、ということまで突き詰めない思考停止の記事が、左翼系の新聞には目立ちます。

⑶沖縄では、辺野古への基地移転に反対する記事が地元新聞を占領していますが、それは、普天間基地の周辺に住む住民の安全性を無視し、沖縄の長期的な安全保障も無視した一面的な誇張型の議論のように思えます。一面を誇張することによって世論を誘導しようとする政治的な記事といってよいでしょう。

⑷反対運動だけを重点的に長時間放映し、賛成のデモは放映しようとしない不公平な取り扱い型もよくみられます。それは、放送法第四条の「公平な取り扱い」に著しく反した放送といわねばなりません。

⑸お先棒かつぎ型というのは、慰安婦、南京虐殺記事などが典型的な例です。いわゆる「慰安婦」は、高級売春婦の別称でした。当時の朝鮮は、高利貸しの借金のカタに娘を差し出す貧しい農家が多く、強制連行するまでもなく、朝鮮人の経営する置屋が新聞で募集すればいくらでも売春婦が雇えたのです。売春婦は、兵士から金を受け取り,中将並みの高給を毎月もらっていたので、実家に仕送りをすることができたのでした。

「南京虐殺」も、日本軍が入城した時は、これで平和な日が訪れると南京市民は旗を掲げて歓迎したほどです。もう多くの論文が出ていますので、説明しませんが、蒋介石軍が鉄道で逃げるとき、蒋派のゲリラ兵や支援者たちが列車に乗ろうと殺到しましたが、蒋介石軍は彼らを足手まといになるとして多数射殺した経緯があります。この時の死体が日本軍の虐殺の証拠として対外宣伝に利用されたのです。

朝日新聞が書き立てた南京虐殺や慰安婦なるものは、中国共産党や反日韓国のお先棒を担いだ典型的な「フェイクニュース」です。

識別する力を

フェイクには、このように、主に五つの種類がありますから、読者や視聴者は、記事がそのうちのどれにあたるのか、識別する力を養う必要があります。広く世界の歴史や世の中の動きを学習し、幅広い教養を身につけることが欠かせません。そして、一つの新聞だけでなく、別の意見を持った新聞も読むこと、ネットからも多様なニュースを入手すること、できれば英語のニュース(ロイター、BBC、CNN、ブルームバーグなど)も見るようにしてください。今は便利になり、ネットから無料で視聴することができます。

私は、もうテレビを捨てました。おふざけ番組が多く、素人の解説者が複雑な時事問題を知ったかぶりで放送していることに耐えられなくなってきたからです。今は、天気予報も、携帯電話で簡単に知ることができ、テレビの必要はなくなりました。

イギリスの報道基準

日本語は列島以外に使われない孤立言語なので、日本語の報道は、間違っていても海外の読者からあまり批判を受けることがありません。もし、英語で逐一報道されていたなら、毎日、多くの異議申し立てが飛び込んでくることでしょう。

日本人の読者、視聴者は、おとなしすぎます。記事や放送に異議を申し立てるのは、大人げないと考える人が多すぎるように思います。

アメリカは訴訟社会ですから、報道に不満を持つ人は、すぐ裁判所に訴えて、謝罪、記事修正などを求めます。名誉侵害訴訟でも、数か月で判決が下ります。我が国では地裁の判決まで早くても二年以上かかりますから、役に立ちません。

イギリスやスウェーデンなどでは、裁判ではなく、専門家の第三者機関を設け、そこで記事の修正などを求める異議を受付け、正誤を審査しています。審査基準は、細かく書かれており、公表されています。例えば、「英国の記事実務基準」には、次のような審査基準が明記されています。

① 新聞および定期刊行物は、不正確な資料、誤解を招くような資料または歪曲された資料を報道しないよう注意しなければならない。

② かなり不正確な記事、誤解を招くような発言、または歪曲された記事が報道されたと認められるときは、迅速にかつそれを相応に目立つような形で訂正しなければならない。

③ お詫び(陳謝)が適切と認められるときは、すぐさまお詫びを掲載しなければならない。

④ 新聞または定期刊行物が当事者となった名誉棄損訴訟の結果については、つねに公正かつ正確な報道をしなければならない。

⑤ 不正確な記事に対する公正な反論の機会を与えるよう個人または団体から正当に要求された時は反論の機会をあたえなければならない。

⑥ 新聞が党派性を持つことは自由であるが、論評か、推測か、事実かを明確に区別しなければならない。

⑦ 記者は、脅迫またはいやがらせ(ハラスメント)によって情報や写真を入手してはならない。

⑧ 記者は、やめてほしいといわれているのに個人に対して電話や質問をしつこく続けてはならない。

⑨ 個人的な悲しみ、または精神的な痛みを伴っている事件においては、思いやりと分別をもって取材し、応接しなければならない。

⑩ 編集長は、これらの制限を記者に順守させるよう措置を講ずる責任がある。

恐れずに異議申し立てを

このほか、四十項目以上にわたって細かく報道実務基準が定められていますので、どれかの基準に違反していると思う読者は、異議を申し立てます。申し立てが認められると、記事の修正、背景説明、陳謝や謝罪を勧告されることになります。この勧告に強制力はありませんが、従わない場合は、その理由を紙面で明らかにしなければならないことになっています。

我が国では、残念ながら、このような報道基準がありません。不満を持つ読者は、その新聞社に異議を申し立てても、社内の関係者で審査するだけですから、結局は泣き寝入りに終わってしまいます。やはり、元裁判官など専門家をあつめた第三者の審査機関(記事不服審査委員会)をつくり、読者の異議申し立てを受けつけ、結果を公表するよう、制度を改正する必要があると思います。また、放送についても、イギリスでは細かく放送実務基準を公表しており、これに違反すると思った視聴者は国の放送不服審査委員会に申し立てることができます。我が国においては、テレビ番組について、放送倫理・番組向上機構(BPO)が設けられていますが、業界団体の作成した放送実務基準はあいまいな点が多く、また、運営経費は放送事業者が出しているので、この点からも出される勧告や見解は事業者に甘くなりがちとなります。

やはり、他の先進諸国と同様に国が放送実務基準を明確に定めるとともに、審査委員の調査権限を拡大し、元裁判官など司法経験者を委員に多数登用し、さらに審査の議論を公表する必要があると思われます。それに必要な費用は、電波使用料を値上げすれば簡単にまかなうことができます。

ネット空間の情報戦争

ネットの世界でも、デマ、不当な宣伝、ヤラセ情報など、差出人不明のフェイクが飛び交っていますが、これに対する有効な対処法をまだどの国も開発していません。今のところ、フェイスブックなどの事業者がAIを使って自動的に排除する方法しかないようです。

一昨年、トランプ大統領は、ロシアの情報機関がフェイクニュースを大量にばらまいて大統領選挙に介入したことを激しく非難しました。EUからの離脱を問う英国の国民投票でも、ロシアがEUの弱体化を狙ってフェイクニュースを流したと英国で非難されています。

ネットの世界では、個人的な趣味で偽情報を流すだけでなく、それよりももっと恐ろしい、情報機関による大規模な政治的情報操作が行われていることが判明したのです。情報操作は、相手の個人の考えや性格がわかると、一層効果的な偽情報を個別に流すことができます。このため、各国の情報機関は、他国民一人ひとりの思想や性格を入手し、分析するツールの開発にしのぎを削っています。

最近、欧州委員会は中国の通信機器会社ファーウェイ(華為技術)が欧州市民の情報を窃取できる半導体を開発したことを発表しました。アメリカ政府もすでに中国製品の危険性を察知し、ファーウェイとZTE( 中興通訊(ちゅうこうつうじん))の通信機器を使わないよう政府機関に指示を下し、昨年末に日本政府も使用禁止に踏み切りました。両社は、中国共産党の謀略組織の指令によって動くことが判明したからです。

昨年十二月にファーウェイの副社長がカナダで逮捕されましたが、その背景には、米中の情報覇権をめぐる熾烈な戦いがあります。米中の対立は、これからますます激しくなっても、やわらぐことはないと覚悟しておくべきです。ファーウェイと密接に提携している日本のソフトバンクに対する風当たりは、ますます激しくなっていくものとみられます。

もちろん、米国も我が国の情報を勝手にとっていますが、価値観を同じくする同盟国ですから、独自の防御法を開発していない現在は片目をつぶるしか選択肢がありません。まちがっても、中国の属国になり、チベットやウィグルのように歴史と文化を奪われてもよいという選択肢はないのです。

ファーウェイの中継ルーターは、少し細工すれば中継基地を通るあらゆる情報を抜き取ることができることが専門家の調査で判明しています。早く手を打たなければ、日本はすでにファーウェイやZTEの中継基地と端末装置を導入していますから、我が国の市民情報や企業情報は丸裸にされることでしょう。いや、もうすでに抜き取られていると覚悟しておくべきでしょう。

彼らは、5Gという超高速の通信網を開発し、安値で市場を席捲しようとしていますが、それを許すと日本のあらゆる情報は完全に抜き取られ、政権党に対するフェイクニュースが選挙の時に大量にばらまかれ、やがて政策を左右される恐れが増大してきています。

日本は、一刻も早く中国共産党の命令を受けて始動する中国製品を日本市場から放逐し、そして他国からの情報工作に対し反撃する手法を開発して、独自の情報主権を確立しなければなりません。情報を制するものは世界を制するのです。