巻頭言

9月号巻頭言「昭憲皇太后御歌」解説
市 村 真 一 / 京都大学名誉教授 

年老いた今、一生を振り返り、私が学び足らなかつたと思ふ事が一つある。それはこの世での女性の役割である。個人の生育と家族生活や、世の変動や国の歴史において女性が果した役割につき、自ら気付き、また学習した知識は、遺憾ながら、その真実よりも遥かに少なく、その効果の認識も不足してゐる。

その一端は、本誌平成三十年七月号の巻頭言に、井深大(まさる)元ソニー社長の『0歳児よりの母親作戦』を引用し、育児への母の貢献が至大なりとして論じた。

この度は、明治日本を天皇と共に作り上げられた昭憲皇后の御貢献、特に女子教育と赤十字や医療等の社会事業整備への御貢献に留意したい。万事が新しかつた明治時代に皇后の為された事柄は、後の皇后さま方の模範にもなつたと言はれてゐる。

巻頭言に掲げたのは、明治九年に創設された東京女子師範学校に下賜された御歌が、後に小学校唱歌となり、我々も愛唱した「金剛石」である。開国直後早くも女子教育振興に御留意とは驚嘆する。しかも幕末既に我が国の識字率は男子も女子も同時期の英仏より高かつた。ぜひネット上で平川祐弘東大名誉教授の皇后百年祭の一文「いま伝えたい昭憲皇太后の祈り」(平成二十六年四月四日産経新聞「正論」)を一読頂きたい。