飛び出す勇気を与えたい

ナズマ・カトゥン/バングラデシュ

私は日本に来る前、バングラデシュのダッカにあるオイスカの女性研修センターで半年間、農業を学びました。バングラデシュは、国民の多くがイスラム教徒です。女性が男性と同じ環境で一緒に学ぶことが難しいため、女性のための研修センターがあるのです。私が農業を学ぼうと思ったのは、大学で哲学を学んでいた中で、環境問題に目が向いたからです。サイクロンのような大きな自然災害を食い止めることはできませんが、特に農業が原因となって起こっている環境汚染の問題、例えば、農薬をたくさん使うことによる土壌汚染、水質汚染、また地下水の汲み上げによる地盤沈下といったものに対しては、何かできることがあるのではないかと考えました。

研修センターで野菜を栽培したり、養鶏を学んだりし、農業がとても大変な仕事だということを自分自身の体験を通して、身をもって感じることができました。さらに日本に行って有機農業を学ぶ機会に恵まれたことで、「チャレンジしてみよう」という気持ちを持つことができました。

でも、初めて一人で外国に行くことは、私にとってチャレンジであると同時に、大きな恐怖でもありました。成田空港に到着するまでは、ずっと怖い気持ちを抱えていたのを覚えています。しかし、空港でスタッフに出迎えてもらい、研修センターで一緒に勉強するいろいろな国から来た仲間たちと会い、怖い気持ちはすぐに全部忘れてしまいました。

日本はとても美しい国です。山にはたくさんの緑があり、川の水は澄んでいます。人が暮らす街並みもきれいです。ゴミがほとんど落ちていません。そして人の心がきれいで強いことに驚きました。日本人は本当によく頑張ります。不安な気持ちを抱えて日本にきた私をいつも励まし、頑張る力をくれた日本の皆さんにとても感謝しています。失敗しても「大丈夫」「次に頑張ろう」と励ましてもらうことで、私の心は少しずつ強くなっていきました。日本に来る前、私は自分が何もできないと思って、新しいところに飛び込むことを不安に感じる性格でした。そして心が弱く、問題に直面するたびに泣いていました。でも、いつも励ましの言葉をかけてもらうことで「自分にもできる」「チャレンジしてみよう」という前向きな気持ちを持てるようになり、いつも泣いている弱い自分を、頑張る心を持った強い自分に変えることができました。

このような経験を経た私は、国に帰ったら、村の女性たちが「自分にもできる」「チャレンジしてみよう」と思えるように、そして、今いるところから飛び出す勇気を持てるようなお手伝いをしたいと思うようになりました。

バングラデシュは女性の社会進出が進んでいるとはいえません。それでも大学に進む女性、外で働く女性が少しずつ増えてきています。ただ、日本のように若い女性が大都市に出て、一人で生活しながら働くようなことは少なく、やはり自分の地域にある会社の事務仕事や学校の先生を選ぶ傾向が強く、また、そうした職に就ける人は限られているのが現状です。そのため、地方の女性やシングルマザーは仕事がなく、家にいることが多くなってしまいがちです。

親や夫に養ってもらうことが当たり前になっている女性たちの働く場となるよう、私は彼女たちに「きのこ栽培」を教えたいと思っています。きのこ栽培は、女性が自宅で一人でも取り組むことができ、収入を得ることができる仕事なのです。私はバングラデシュの研修センターで、きのこ栽培を体験し、とても興味を持ちました。

幸い、日本での研修中に、福岡県にある、きのこ生産組合で、学ぶ機会をいただきました。そこではたくさんの女性が働いていて、とても勇気づけられました。女性が一人で野菜やお米をつくるのは大変ですが、きのこ栽培なら、私が村の女性たちに、「大丈夫」「あなたにもできる」と声をかけて、みんなを励ましながらできるのではないかと考えています。

実は、バングラデシュの田舎の人たちはきのこを「カエルの傘だ」といって、食べたがりません。しかし、都市部では人気のある食材で、高く販売することができます。私がきのこ栽培を始めることは、バングラデシュの女性が自立に向けたチャレンジの機会をつくることでもあります。そして、きのこのお料理も教えて、きのこはカエルの傘ではなく、おいしくて、栄養もある食材だということも教えてあげたいと思っています。