巻頭言

六月号巻頭言「国家あつての法」解説
吉原恒雄 / 元拓殖大学教授 

憲法改正の焦点の一つは、現行憲法に欠落してゐる緊急事態規定の追加である。自民党内では、憲法に緊急事態規定を織り込むことでは意見の一致を見てゐる。

だが、念頭に置いてゐるのは自然災害への対処だけであり、肝心の外国の侵攻や内乱への対応には及び腰である。

諸外国での緊急事態法制、慣習法で中心となつてゐる行政権の権限強化、国民の私権制限等は見送られるやうだ。ただ、財政措置として「緊急政令」を盛り込むことが検討されてゐるが、与党の公明党が反対してゐる。

理由は「災害対策基本法に該当規定があり、憲法への規定は不要」といふものだ。指摘の通り、激甚災害の際に内閣による「緊急政令」で対応する規定がある。それどころか、一部私権制限規定もある。だが、災害には対応できるが、外国の侵攻には対処できない法的状況を放置しておいて良いのか。

現状では、主権的独裁に移行しかねない「超法規的措置」をとるか、「占領憲法」を遵守して亡国の悲運に泣くかの二者択一しかない。

我が国は、戦ひが総力戦になつた場合、首相は「首班」、一内閣の座長に過ぎず、戦争指導ができない。保守は守旧ではないのだ。