巻頭言

十二月号巻頭言「幼児教育を憂ふ」解説
市村真一 / 京都大学名誉教授 

四年前の今月の巻頭言は、トランプ氏が米大統領に選出されて、米国の内政外交が自国優先に激変した時書いた。多くの読者は、“アメリカ、ファースト”と顔をゆがめて叫んだ彼を覚えてゐよう。私はそこに古きモンロー主義の影を見て、その矛盾を論じた。バイデン新大統領は国際協調に転じるか、こちこち共産党の習近平総書記がどう出るか、見物(みもの)だ。

加へて、世界は疫病の真最中、新型コロナの大災厄が全人類を悩ましてゐる。幸ひ日本の病害は外国より軽いけれども、この副作用を私は心配する。それは乳幼児の世話が一段と手抜きになり、しつかりした性格の子供が育たないことである。私には国際関係もさることながら、次世代に頼りになる日本青年がゐなくなりはせぬか、が心配なのである。

昔から「三つ子の魂、百まで」と言ふ。それは人の魂の根本が、幼少時、母の胸に抱かれてゐた時、おつぱいを頂いていた時、養はれることを教へる。

今や先進国の父母は半分以上共働き、子供はほつたらかしだ。老境になり、放任された児童がどうなるかは見た。孟母三遷の教へは知らぬ者はない。学校より、学齢前の乳幼児の育て方を井深さんに学んで欲しい。お父さん、お母さん、頼みます。