巻頭言

四月号巻頭言「先哲を仰ぐ」解説
市村真一 / 京都大学名誉教授 

引用の文は、昭和四十三年四月、平泉澄先生が御著の序に認められたものである。同書の構想は、昭和三十年初め以降、大阪府茨木市の青々塾にあつて先生の学問を青年学徒に伝へる努力をしてゐた私が、先生の著書論文の入手難に困惑し、戦中戦後に愛読した先生の論著や講義講演の速記録を整理謄写して教本を作成せんと欲したことに発した。先生の御許可を得て論集を編輯、一案を御提示したところ、先生は大変喜ばれ「先哲を仰ぐ」との題名を付けられ、自筆してお送り下さつた。

最初の本は、当時、『桃李』の印刷社であつた京都の内外印刷に依頼作成。自費出版だつたが、残部が数年で無くなり、千部を増刷した。昭和四十年頃それも無くなつたので、先生に御相談し一般書籍としての出版を決定した。その際、先生や先輩方の示唆もあり、書中の先哲の御姿や歴史的遺品の写真掲載を切望、皇學館大学の谷省吾教授等のお力添へを得、また北野神社・高山寺・吉田神社等の御許可を得て、その英姿尊厳を読者に示すことができた。

先生は、数え年九十歳の厳冬にお亡くなりになり、程なくソ連が崩壊、冷戦は共産国の完敗で終つた。

今、新たなる冷戦下、新版を刊行する。先哲に二宮尊徳翁を加へ、あとがきを書き改めた。