相手の立場で考える日本人

トゥブデンドルジ・トゥメンデンベレル/モンゴル

これまで日本での研修の機会を二回いただき、四国の香川県と東京の杉並区で生活をしたことがあります。その中で、いくつも感心することがありました。

一つ目は、日本の保険制度です。外国人の私たちも国民健康保険に加入することができ、病院での診察を安く受けられるので安心でした。実は二回目の研修中、原因が分からない体調不良に悩まされたことがありました。いくつもの病院を受診し、甲状腺に異常があることが分かるまでにだいぶ時間がかかりました。ヨード(ヨウ素)の過剰摂取が原因でした。私の国、モンゴルは日本と違い、海に面していない内陸国です。日本人は海に囲まれた環境で生活しているため、豊富に採れる昆布やヒジキなどの海藻に多く含まれるヨードを日常的に摂取することができます。しかし、内陸国では、ヨード分が足りないことから、乳幼児の脳に深刻な影響を与えることが多くあります。そのため、モンゴルではヨードを日常的に摂取できるように、ヨードを添加した塩が一般に普及しており、私もそうした塩を選んで使っていました。しかし、日本に来てからもその習慣が抜けず、毎日の食事でしっかりヨード分を摂取できていたにもかかわらず、さらに塩などでも摂取していたため、甲状腺に異常が出てしまったという訳です。一緒に生活していた日本人も知りませんでしたが、実はモンゴルのヨード添加塩の製造・普及は、日本のODA(政府開発援助)の一環としても行われてきており、モンゴルの子どもたちの健康的な成長は日本の皆さんに支援してもらってきたものなのです。

また、健康面での日本の取り組みで感心したのは、健康診断が気軽に受けられることです。東京での研修は、四十歳を過ぎてからだったので、私も杉並区の女性健診(乳がんや子宮がんの健診)の対象となっており、五百円で健診を受けることができました。こうした行政の仕組みのおかげで安心して暮らしていけるのだと思いました。

二つ目の驚きは、日本の製品のパッケージに施されている工夫です。何でも使う人のために考えて作られていて、とても使いやすいことに感心させられます。特に分別のしやすさには驚きました。日本人は、環境問題への意識も高く、ゴミの分別もみんながしっかり取り組んでいます。これは行政の働きかけもありますが、企業の努力もあると感じました。例えば、ペットボトルはラベルをはがしやすいようにミシン目が入っていますし、調味料のビンについているプラスチックの注ぎ口は、捨てる時には取り外しがしやすいように作られています。

また、治安の良さも日本のいいところです。物を盗まれるようなことがないため、毎日安心して過ごすことができました。ただ、治安がいいからと安心していた私の行動で、日本人を驚かせてしまったことがありました。マイナス何十度にもなる寒さを経験しているモンゴル人の私にとっては、日本の夏はもちろん、春でもとても暑く感じられます。そのため、エアコンをつけるほどでもない春の間、夜寝る時に部屋の窓を開けたまま寝ていたのです。それを知った日本人がとても驚いて、「絶対にダメ!」と注意されてしまいました。二階ならまだしも、道路に面した一階の部屋でそんなことをしているのは危ないというのです。危険だと思ったことは一度もありませんでしたが、彼女の忠告には従うことにして、暑い夜を過ごしていました。今でも日本は安全な国だと思っています。

もう一つ感心するのは、日本人は教え方が上手だということです。相手が分かりやすいようにという親切心があるからかもしれません。特に、外出した時に道を聞くとみんな親切に丁寧に教えてくれるので、必ず目的地にたどり着くことができました。モンゴルでは簡単に「まっすぐ行って、右に曲がってください」と教えるだけですが、ある日本人は、私が迷わないように一緒についてきてくれて、「この信号はボタンを押してください」と歩行者用の信号の使い方まで教えてくれました。実際、歩行者用の信号は初めてだったので、教えてもらわなければずっと渡れなかったかもしれません。

日本人は、いつも相手にとって何が必要なのかを考えているからこそ、親切に教えることができるし、使いやすい製品を生み出せるのだと思います。