巻頭言

八月号巻頭言「終戦の詔書と日本再興」解説
市村真一 / 京都大学名誉教授 

嗚呼(ああ)、あの昭和二十年八月十五日より、星霜流れて七十六年。日本は今、戦後二度目の東京オリンピック競技大会を、コロナ猖獗(しょうけつ)の只中に開催して全世界の注目を浴びてゐる。この間、世界情勢は一変、二変、三変した。而して日本はよく昭和天皇の御期待に応へ奉り、世界の指導国家G7復帰を達成した。七十六年間は凡そ明治元年(一八六八)から昭和十六年(一九四一)大東亜戦争の勃発時までに相当する。たつた四杯の黒船で夜も眠れなかつた日本が、十五年後には明治維新、七十三年後に米英に開戦した近代化も驚嘆だが、第二次大戦後の世界の激震も物凄い。 誤まりて共産国ソ連と組んだルーズベルト米大統領は終戦前に死し、反共のトルーマンに代つたが、スターリンは一九五〇年に朝鮮戦争を惹起(じゃっき) し、世界は冷戦に突入した。冷戦四十年、ソ同盟の崩壊は惨状を極め、衛星国も消滅、ソ連圏は一ロシア共和国に縮小、西独が東独を併呑(へいどん)し、中東欧諸国は殆ど欧州連合とNATOに加盟した。