巻頭言

十一月号巻頭言 『コロナ禍と学力低下』 解説
市村真一 / 京都大学名誉教授 

幸ひ我が国では、コロナ禍の被害は急速にしぼんでゐるが、最近、シンガポール大の学部長からのメールによると、同国ではコロナ禍の再拡大が激しく、息子の結婚式もできないといふ。この調子だと、世界の病害は嘗てのペスト同様、大戦争並の被害を与えるやも知れぬ。米国での死者数が七十万人を超えたと聞いたのは、だいぶ前である。今、地球は、大きな転換期の中にあるのではないか。地球惑星上の生存に匹敵するほどの課題は、それほど沢山はない。

つまらぬいさかひを止めて、諸国諸民族はもつと根本問題を心配すべきでないか。多くの宗教家も、勢力争ひをやめ、民の生存を第一に考へねばならない。

ロシア・中国・中近東回教圏の指導者の民衆指導を見て来て、私は、彼等の政治思想の貧困に驚く。他人の非を攻撃する時の半分の厳しさで、己の統治下の民の生活の実態を眺めよ。スターリン、毛沢東等を神の如くあがめ、讃へた人々よ、その追随者よ、忘れるな、ソ連邦も毛政権も、百年はもたず崩壊したことを。恐れよ、うぬぼれの肥大を、勉強不足を、智慧の堕落を、学識の不足を。我等は、一日たりとも勉学をやめてはならぬ。