巻頭言

十一月号巻頭言 「汝自身を知れ!」 解説

久野勝弥 

平泉澄博士が昭和四十五年、『少年日本史』を執筆・刊行された時の挨拶文の冒頭である。続けて、「禍(わざわい)なるかな、父祖の精神を曲げ、その行動をゆがめ、全体として之を軽んじ、之をふみにじるもの、そこには当然、思想の混迷と道徳の荒廃とが結果し、国運の衰退と民族の崩壊に脅かされるであろう」と述べられ、加へて、「今此の小著は、一千枚の原稿に、二千数百年を包括するもの。国家の現状を見て、憂憤の情、禁ずる能わず、敢えて之を草して、今後の国運を担うべき少年に贈ろうとするものである」と記されてゐる。

時事通信社社長の長谷川才次氏は、「刊行のことば」で、「若くして東大国史科の主任教授という重責を担われた一代の碩学が、多年の蘊うん蓄ちくを傾け古典に新風を加味し、二年近くにわたり想を練り、全く稿を新にしてでき上ったのが『少年日本史』です。(略)先生が『ライフ・ワークとなりましょうかね』と漏らされて、親しくご執筆頂いたのですから、『少年日本史』こそ戦後の『思想的乱世』にさまよう仔羊たちに、はっきりゆく手を示す、あけの明星となるでしょう。自信を以て江湖におすすめします」と加へられた。

本書は後に講談社から『物語日本史』として、文庫本化(上・中・下三冊)された。高校生の諸君には、こちらで読んで欲しいと思ふ。